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技術情報

微粒子技術コラム

応用編
撹拌動力について

ビーズミルの撹拌動力1)

ビーズミルの撹拌動力 P [W] を予測・推測することはビーズミルの設計の基本で、アジテータの回転数 n [1/s] と撹拌トルク T [N] より、式1で定義される。

また、Pn およびアジテータ径 D [m] から動力数 Np [-] が定義され、この値はビーズミルのタイプ、ビーズの種類、スラリーの流動特性ならびに操作条件によって決まる。

ここで、ρGM [kg/m3] はビーズ密度である。撹拌動力はアジテータ径の5乗、回転数は3乗で影響するため、径の大きさを変えて周速を合わせる場合はアジテータ径がビーズミルの撹拌動力に対して大きな因子となる2)
一般に動力数 NP は、式3に示すレイノルズ数 Re [-] と式4に示すフルード数 Fr [-] の関数で表される。

ニュートン流体と見なせる(媒体+スラリー)系で、層流域で粉砕される場合は、

が成り立つ。しかし、実際の粉砕は乱流域で非ニュートン流体のため、

となる。ここで、g [m/s2] は重力加速度、c1 [-] はアジテータ形状に依存する定数、c2 [-]は定数、 α [-] はアジテータのせん断速度定数、β [-] は流動指数である。この関係はスケールアップにも適応できるといわれている。
ビーズミルのアジテータ形状によっても動力に違いがあり、回転数とスラリーの密度や粘度も動力に大きな影響を与える。

比エネルギーと撹拌動力の関係1)

ミル内粒子体積当りの撹拌エネルギー(比エネルギー)EV [J/m3] と撹拌動力 P との間には式7が成り立つ。

ここで、VS [m3] はミル内の粒子体積、USUSP [m3/s] はスラリーの流動速度、CV [-] は固体容積濃度、t [s] は粉砕時間である。ただし、これらの相関式の適用範囲は30 < EV < 6000となっている。
また、単位体積当たりの増加比表面積⊿S [1/m] と EV との間には一定の関係が成り立ち、

EA [m2/J] は粉砕効率となる。
式7と式8から、比エネルギーや比表面積の増加(砕製物の微細化)にも撹拌動力が影響し、結果としてアジテータ径が影響することになる。

媒体撹拌ミルの撹拌動力式例

媒体撹拌ミルは通常容器の形状により、塔型、撹拌槽型、流通管型、アニュラー型などに分けられる。ここでは撹拌バータイプと横型ビーズミルの撹拌動力について考える。

1. 撹拌槽型における撹拌バータイプの撹拌動力式3)

撹拌槽型では撹拌バーの取付け方によって高効率化を図ったり、磁力を負荷して粉砕特性を向上させるなどの工夫がなされている。
撹拌槽型における撹拌バータイプの撹拌動力式 Pa [W] には、粉砕媒体のかさ密度 ρb [kg/m3]、アームの本数 Na [‐]、アームの直径 da [m]、アームの長さ la [m]、アームの先端速度 Va [m/s] を用いて、式9が提案されている。

CD は抵抗係数 [‐] で式10のように示され、粉砕媒体の仕込み高さ H [m]、重力加速度 g [m/s2]、基準タンク径 D0 [m]、タンク径 DL [m]、アーム長さ la [m] を用いて、フルード数の関数(式11)として表現される。

2. 横型ビーズミルの撹拌動力式2)4)

Stehrらは横型ビーズミルを用いて異なる実験式で多くの実験を行い、撹拌動力 Ps [kW] について、アジテータ径 D [m]、回転数 n [1/s]、スラリー密度 ρSUSP [g/cm3]を用いて、実験相関式12を得ている。

よって、ビーズミルの撹拌動力においては、アジテータ径の影響が大きいことがわかる。

まとめ

撹拌動力からビーズミルの粉砕・分散への影響を検討すると、アジテータ径が動力に大きく影響していることが分かる。大型化する際はアジテータ径が大きくなるためモータの選定や冷却と発熱を考慮した運転条件が必須となる。

引用文献

  1. 神田良照:化学工学,66,11,696(2002)
  2. 中山勉:超微粒子・ナノ粒子をつくるビーズミル、森北出版、p.119(2011)
  3. 化学工学会編:改訂7版化学工学便覧、丸善出版、p.732(2011)
  4. 柳田博明監修:微粒子工学大系全2巻第1巻基本技術、フジテクノシステム、p.810(2001)