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微粒子技術コラム

運転編
乾式ビーズミルの運転方法<閉回路粉砕>

乾式粉砕の運転方法には、「連続式」と「バッチ式」の2種類がある。運転方法の選択は、砕製物粒子径のほかに処理量やコストなども考慮する必要があり、大型化や大量処理の場合は連続式にメリットがある。
連続式には「開回路粉砕」と「閉回路粉砕」があり、ここでは閉回路粉砕について解説する。

乾式ビーズミルの運転方法

1. 閉回路粉砕

「閉回路粉砕」は分級機を設置して微粒子を回収しながら粉砕する方法である。取り付ける場所によって目的が異なる(表1)。

表3 分級機の取り付け場所と特長

閉回路粉砕では「分級機後置型」が主流になっている。このタイプは粒子が粉砕されると分級機に取り込まれ、微粒子のみ製品として取り出す。粗粒子は分級機から粉砕機に戻り、新しい砕料と一緒に粉砕される(図1)。分級が可能な範囲では粗粒子のみ粉砕可能となるため微粒子によるコーティングやクッショニングの防止ができ、エネルギー効率の高い運転が実現できる。また、過粉砕も抑制できるので粒子径分布の幅が狭くなる。

図2 乾式ビーズミルを用いた閉回路粉砕のフロー

2. 閉回路粉砕の運転方法1)

閉回路粉砕の性能には循環比 CL が大きく影響する。循環比とは原料供給量と製品流量に対して分級粗粒子が循環している割合であり、分級機後置型の場合は下記で表せる。
原料供給量 ff と製品流量 p は等しく、分級機からの粗粒子流量 r は原料供給量 ff と一緒に再び粉砕室に入るとすると循環比は、式1と表せる。

砕料の粉砕機内通過量 f0 は分級機に供給される粉体量 q と等しいので、原料供給量 ff と製品流量 p は、式2となる。

ここで、分級機の選択は供給量と目標の分離粒子径に対して十分な分級性能を持っている必要がある。
実プロセスでは式1を使用して各流量から算出すればよいが、不可能な場合は各所の粒子径を式3に当てはめる。

ここで、f(Dp(i)) 粉砕機出口(分級機入口)、r(Dp(i)) 分級機出口(粗粒子側)、p(Dp(i)) 分級機出口(微粒子側:製品)の粒子径であり、任意の粒子径以上の質量割合(積算ふるい上率)である。
砕料供給量のみの操作では循環比や被粉砕物通過量の変化と同時に砕製物の粒子径も変化する。よって砕料供給量と分級機による粒子径調整の双方を行ない、循環比の最適値(最大値)を調べる必要がある。

3. 閉回路粉砕装置 シグマドライSGD

閉回路粉砕装置の分級機内蔵型 乾式ビーズミル 『シグマドライSGD(以下SGD)』は、ドライスターSDAの微粉砕と分級機を合体させることによって、粒子径分布の調整の自由度の向上と粉砕限界粒子径の最小化を実現し、さらには粉砕エネルギー効率の大幅な改善を達成した内部分級型粉砕機である(写真)。SGDには、「分級ゾーン」「分散ゾーン」「粉砕ゾーン」がある(図2)。

図2シグマドライSGDの外観図

図3 シグマドライSGDのユニット図

3.1 SGDの4つの特長

1) 粉砕ゾーンは強力粉砕構造
特殊形状のピンを使用することで、従来のバッチ式乾式ビーズミルよりもビーズに力が入りやすく、砕料により強く衝撃を与えることができる。また、小径ビーズの使用やアジテータ周速を速くすることができるため、さらに微細化が可能になった。粉砕室は空気の流れを考慮しており、効率的にエネルギーを投入することができる。

2) 分散ゾーンでの凝集体の分散
粉は細かくなるほど凝集力が強くなり、取り扱いが難しくなる。ビーズミルにおいても砕料を微細化すると微粒子どうしが凝集して装置内部への付着の原因となる。そこで、装置内に分散ゾーンを設けることで粉砕後すぐに凝集する微粒子をほぐし、装置内での付着を防ぎ、次工程の分級を行うことをできるようにした。また、粉砕助剤の添加量を減らすことができた。砕料の種類によっては使用せずに安定した運転が可能な場合もある。

3) 分級ゾーンでの粗粒子カット
装置内に遠心力を利用した回転羽根式の分級機を設置することで粗粒子カットを実現した。分散ゾーンで1つ1つにほぐされた粒子が分級機により微粉と粗粉に分級され、微粉のみを効率的に回収することができる。

4) 理想的な粉砕操作(自由粉砕)
粉砕の過程で微粉が増加すると微粉自体が緩衝剤となり、粉砕速度や粉砕エネルギー効率が低下する。このため微粉を除去して、砕料に十分な力の伝達が可能な状態で粉砕する必要がある。粉砕された砕製物は直ちに回収されるため、粉砕室には粗粒子のみが充填され効率的に粉砕されるので、理想的な粉砕操作を単体装置で実現した。

3.2 シグマドライSGDによる実験例

分級機の回転数とブロア空気量により風量が異なる場合の砕製物の粒子径分布の変化をグラフに、粉砕結果を表に示す。ビーズ径、ビーズ材質、ビーズ充填率およびアジテータ周速は一定とし、対象物にはケイ砂と金属シリコンをそれぞれ用いた。分級機の回転数が速く、風量が少ないと回収される砕製物の量は少なくなるが、メディアン径と最大粒子径は小さくなり、粒子径分布もシャープになることがわかる。

図4 ケイ砂の粉砕結果/表2 ケイ砂の粉砕結果

図5 金属シリコンの粉砕結果/表3 金属シリコンの粉砕結果

引用文献

  1. 粉体工学会編:粉砕・分級と表面改質、NGT、p65(2001)
  2. 日本粉体工業技術協会編:先端粉砕技術と応用、NGT、p.43(2005)