ナノ粒子の医療分野活用_難溶解性原薬(API)の吸収性改善

微細化のメリット

原薬(API)を微細化(粉砕・分散)することで,さまざまなメリットが得られます。

その一例として,粒子を細かくすることで粒子の比表面積が増え,難溶解性原薬の吸収性改善や薬の効きめを早めることが可能となります。

また,少量の原薬で効果が出るため,患者への投与量や副作用のリスクが減り,コスト削減にも繋がります。

米国研究製薬工業協会(PhRMA)によると,医薬品開発には平均で 12~15 年もの歳月を要し,5,000 もの研究のうち,医薬市場に出回ることができる新規化合物はたった1つです。

このように多くの新規化合物は,低いバイオアベイラビリティ,低い溶解性,短い保存可能期間,激しい副作用を伴う,利きが悪いなどが原因で製品化に至りません。

理論的に,ナノ粒子化は経口薬,注射薬,点眼薬,吸入薬などすべての医薬の改善において期待できます。

数多くの研究結果でも微細化された原薬は吸収性に優れ,効率よく伝達されることが明らかにされています。

原薬の微細化は,溶解性が低い BCS クラス 2や4で特に有効で,例えば,腫瘍をターゲットとした低溶解性の原薬において有効性の向上が確認されています。

また,75~900nmに微細化したナノ粒子を使うことで悪性組織にのみ働きかけができる化合物の作製にも成功しています。

ナノ粒子化は,過去に研究で行き詰まり製品化に至っていない原薬の製品化につながる可能性があります。

ビーズミルによるナノ粒子化

原薬や医薬品をナノレベルまで微細化するには,微小ビーズを粉砕媒体としたビーズミルが有効であります。

ビーズは,サイズや密度,材質が豊富で,それらのビーズが粒子に対してシェアや衝撃力を与え粉砕が行われます。

ビーズミルは粒子径コントロールや生産コスト,開発段階から生産段階までのスケールアップ,コンタミネーションのレベル,再現性,cGMP 対応などすべての要求を満たしており,医薬品の微細化に有効です。

ビーズミルの原理は粉砕室の中にあるアジテータの回転によりビーズに動きを与え,ビーズ間で発生するシェアや衝撃力で粒子を粉砕していきます。

粒子径を微細にするためには応力強度と接触確率の 2 つの要因が大きく関係しています。

応力強度とはビーズがどれだけ運動エネルギーを与えているか,また接触確率とは粉砕室内でどれだけ接触するかです。

微粒子を作り出すためにはより多くの接触を必要とするため,微小ビーズが有効です。

ナノ粒子分散―再現性の確立

粉砕とは,一次粒子を破壊することにより新しい界面を創出し粒子の表面積を増加させる操作です。

よって,粉砕された微粒子は比表面積や表面エネルギーが大きく,分散(粒子を散在させ安定化させる)状態を保つことが難しいです。

例えば,粉砕によりナノ粒子化に成功したとしても,粒子同士が凝集(集まり固まる)し大きな粒子として振舞うことにより,ナノ粒子として期待する効果や特性が得られないことがあります。

仮に,それがナノ粒子としての機能を発揮したとしても,凝集状態は再現性に欠ける不安定な状態であり製剤設計の障害となります。

そこで,液中でナノ粒子を分散させる技術が重要となります。

分散技術には化学的要素と機械的要素との両面が必要である。化学的要素は,いわゆる分散剤です。

医薬に使用できる添加剤は限定されるので慎重な考慮が必要です。

一方,機械的要素としては,粒子活性を抑えた微細化技術が重要です。

ナノ粒子の微細化には 30~200μm 程度の微小ビーズ有効でスケールアップにも対応し,かつ費用対効果が期待できます。

微小ビーズは接触頻度が多いため効率よく微細化でき,また,ビーズ一個の重量が軽いため粒子に対する過剰なエネルギー投下を抑制できます。

これらにより,粒子表面に蓄積するエネルギーが抑えられ,凝集の防止に顕著な効果があります。

また,粒子特性の維持,コンタミネーションの低減,低温処理,省エネなどにも役立ちます。

つまり,適切な力で一次粒子まで凝集体をほぐす「マイルド分散®」技術です。

ビーズミルの選定の注意点

微細化プロセスにおいて最適な装置を選択すると,再現性の向上や,研究段階から生産段階に効率よく移行することが可能です。

処理量は研究段階により異なり,ビーズ径や周速は粉砕効率に大きく影響を与えるため対象物や開発の段階に応じてフレキシブルに運転条件を調整できる装置が必要です。

また,微小ビーズのハンドリンク性も重要な要素です。

 

ナノ粒子ワールドを運営しているアシザワ・ファインテックでは最適な装置とハンドリングの提案が可能です。