酸化鉄

    
材質 酸化鉄
請求機能・特徴 軟磁性、高磁性、半硬磁性、
平均粒径 0.1~20μm
粒子形状 針状、紡錘状、粒状、六面体、球状、
具体的用途例 顔料、触媒、磁性材料、フェライト用原料、ブレーキ用材料、トランス、コイル、電波吸収体、磁気テープ、電子写真用キャリア
利用用途(粒径別) 0.1~30 μm 電磁波吸収シート
1~100 μm フィラー用フェライト粉
5μm〜30 μm ソフトフェライト粉
20~50 μm 電子写真用キャリア(コア材)

酸化鉄の主な機能

酸化鉄は鉄の酸化物です。「酸化鉄(II) (FeO)、ウスタイト、酸化第一鉄」 や「酸化鉄(III) (Fe2O3) ヘマタイト、マグへマイト、酸化第二鉄」「酸化鉄(II,III) (Fe3O4)、四酸化三鉄」など、酸化数の異なる組成がいくつかあり、同じ組成でも様々な呼び名で呼ばれます。

酸化鉄は天然下でも様々な状態で存在しており、赤鉄鋼、褐鉄鉱、磁鉄鉱など、鉱物として存在しています。

酸化鉄は、日本人にとって非常に身近な存在で「弁柄(ベンガラ)」と呼ばれる酸化鉄(III)を原料とした朱色の顔料が古くから用いられてきました。その他にも黄色酸化鉄を原料とした「黄土(きつち)」や、黒色をした黒色酸化鉄など、様々な形で無機顔料として古くから利用されてきます。

酸化鉄の中でも、酸化鉄(II) と呼ばれるものは、磁性が強く黒色の個体で発火性があります。この酸化鉄(II)を鉄の表面で覆うと、錆止めの効果が得られます。酸化鉄(II)は電気を通さない特徴を持っており、脆いという特徴も。

弁柄に用いられる酸化鉄(III)は、結晶の際には金属光沢のある黒色ですが、粉末になると赤茶色に変化します。いわゆる赤錆で、鉄が自然に酸化してできるのがこの酸化鉄(III)です。

ちなみに、酸化鉄(III)は、近江八幡地方で食べられている赤こんにゃくにも添加されています。化学的に安定していることから、赤こんにゃく以外にも釉薬や化粧品などの色素としても利用されています。

酸化鉄(III)の粒子は細かく、研磨剤として古くから利用されており、砥石などにも使用されています。赤茶色の砥石は、酸化鉄(III)が使われています。

酸化鉄を主原料とし、バリウムやストロンチウムを加えて焼き固めたものが「フェライト磁石」です。フェライト磁石は、酸化鉄の持つ磁性を固定したまま焼き固めるため、強い磁力を持ちます。

近年ではさらに磁力の強い、ネオジムを使った「ネオジム磁石」も流通していますが、高価であるため、フェライト磁石は今なお、磁石の中でも高いシェアを誇ります。

酸化鉄は、その磁力を用いて磁気メディアとしても利用されてきました。オーディオテープや磁気ディスク、ビデオテープなどが磁気メディアの一例です。磁気メディアは現在では少なくなっています。

材質の利用用途

酸化鉄の中でも、直径が1~100 nmである「マグヘマイト」や「マグネタイト」が酸化鉄ナノ粒子として使われます。

酸化鉄のナノ粒子は、「超常磁性」と呼ばれる特徴を持っています。

超常磁性とは、磁化の向きが温度の影響でランダムに反転する影響で、観測上、磁化がゼロであるように見えることを指します。

酸化鉄ナノ粒子は、医療への研究・利用が盛んです。超常磁性を持つ酸化鉄は、治療薬を狙った患部に届ける「薬物伝達システム(ドラッグデリバリーシステム)」のキャリア(運ぶために必要な媒体)として活用されています。

また、交流磁界(交流電流で発生する磁界のこと)で発熱する特性を活かし、温熱治療法としてがん治療への利用が期待されています。MRI(核磁気共鳴映像法)の造影剤としても使われます。

その他にも、酸化鉄ナノ粒子にポリマーコーティングを施したものは、他の生体分子との結合ができるため、バイオセンシングなどへの利用も研究されています。

医療やバイオ分野への利用が盛んな一方で、酸化鉄ナノ粒子はエレクトロニクスへの利用も盛んです。

代表的なものは、リチウムイオン電池のアノード(外部から電流が流れ込む電極)材料としてや、電子ノイズなどから回路を保護するEMI(電磁波妨害)としても活躍しています。