酸化亜鉛

    
材質 酸化亜鉛
訴求機能・特徴 紫外線遮蔽性、透明性
平均粒径 10〜100 nm
粒子形状 球状
具体的用途例 反射シート、インキ、トナー、樹脂添加剤、建築用途料、サンスクリーン剤、ファンデーション、化粧下地、乳液、口紅、不識布、防臭剤、脱臭剤
利用用途(粒径別) 10 nm〜100 nm サンスクリーン剤、化粧品、トナー

酸化亜鉛の主な機能と用途

酸化亜鉛(ZnO)は、亜鉛の酸化物です。酸素と亜鉛の化合物である酸化亜鉛は、亜鉛華や亜鉛白とも呼ばれる場合もあります。

亜鉛はあまり目立ちませんが、世界全体での年間産出量が1000万トン前後と多く、銅と同程度の産出量を誇っています。地球上に多く存在する資源で、枯渇の心配がないことから、産業用途であらゆる分野で応用展開が期待されている物質です。

酸化亜鉛が最も使われている分野は「ゴムへの添加材」です。ゴムに弾性を加える工程は「加硫」と呼ばれますが、この加硫を行う際に耐久性や熱放散性を目的に酸化亜鉛が添加されます。ゴムの種類にもよりますが、耐久性が求められるゴム製品には酸化亜鉛が多く含まれる傾向にあります。

ゴムへの添加に続いて、酸化亜鉛が使われる分野は「顔料」としてです。
酸化亜鉛は、広い波長域にわたって光を反射します。複数の波長を跳ね返すため、酸化亜鉛は白色をしており、白色の顔料として広く普及しています。

また、酸化亜鉛は紫外線を反射する特性も持っており、この特徴から日焼け止めやファンデーションといった化粧品としても利用されます。

純度の低い酸化亜鉛は白色ですが、高純度の酸化亜鉛は透明度が高く、ファンデーションなどに高純度の酸化亜鉛を使用すると、よりナチュラルな色味を出せるのが特徴です。

紫外線を反射する性質をもつ物質には、先程と同じく酸化チタンがあげられますが、酸化亜鉛には毛穴を収縮させる「収れん作用」がある点で性質が異なります。

酸化亜鉛の収れん作用は微弱ではありますが、常に毛穴を閉じているとニキビなどの原因になるので、酸化亜鉛の入った化粧品などの使いすぎには注意したほうがいいでしょう。

酸化亜鉛は塗り薬としても利用されることがあり、酸化亜鉛に軟膏用の添加剤を加えたものを「亜鉛華軟膏」と呼びます。

亜鉛華軟膏は、炎症を和らげる効果と、傷口から出る浸出液を吸収し、乾燥させる役割を持ちます。劇的に症状を改善する効果は期待できませんが、長期的な皮膚の保護に利用可能です。

酸化亜鉛は「光触媒」の性質も持っています。光触媒とは、酸化亜鉛が光と反応し、高ウィルス効果などの機能を発揮することを指します。酸化亜鉛の光触媒機能は、比較的暗い環境でも発揮されるのが大きな特徴です。

光触媒の機能では酸化チタンがとても有名ですが、酸化チタンは酸化亜鉛に比べて高価という問題があるため、生産がより容易で安価な酸化亜鉛を用いる研究があらゆる分野で進められています。

また、電気を伝える「導電性」を持っているのも酸化亜鉛の特徴です。そのため、酸化亜鉛は導電性の性質とゴムの添加剤としての性質から、ゴムの導電性をコントロールするために利用されています。

酸化亜鉛は、半導体への利用や液晶パネルへの利用が期待されていた時代もありましたが、耐酸性が低く、取り扱いが難しいという理由で実用化には至っていません。しかしながら、酸化亜鉛のエレクトロニクス用途は現在も期待されており、研究が進められています。

酸化亜鉛ナノ粒子の主な機能と用途

高純度の酸化亜鉛は透明性が高いことを先程解説しましたが、ナノ粒子化した酸化亜鉛はさらに高い透明度を持ちます。

そのため、透明でありながら、広い範囲の周波数の紫外線を反射できます。ガラスや塗装表面の色味に影響を及ぼさない、紫外線の反射コーティングが可能です。

ナノ粒子化した酸化亜鉛は、ブラックライト(紫外線灯)を照射すると蛍光発光をするようになります。この蛍光発光の性質と、生体への影響が少ない性質から、がん細胞を可視化する技術として研究が進んでいます。

また、光触媒の機能性はナノ粒子化されていない酸化亜鉛でも発揮されますが、粒子が細ければ細かいほどその効果が高まることで知られています。